仕事の上で、あるいはプライベートでお付き合いのある人をすべて思い浮かべてみて下さい。
おそらく、親しい、また会いたいと思う人がおよそ2割、気に入らない、あまり会いたくもないという人がやはり2割、残りはどちらとも言えないという人でしょう。
これを「2:6:2の法則」と言います。
会社などの組織でも、「よく仕事をする社員」が約2割、「まったく仕事をしない、いない方がいい社員」が約2割、残りは「そこそこ仕事をする社員」とよく言われます。「2:6:2の法則」とは、このような経験則なのです。
パレートの法則
「2:6:2の法則」を誰が言い出したのかは分かりませんが、ビジネス分野で有名な「パレートの法則」の応用であろうという指摘があります。
パレートの法則とは、2:8の法則とも呼ばれ、例えば、「売り上げの8割は2割の顧客によって生みだされているとか、販売品目の2割が売り上げの8割を稼いでいる」というようなものです。
ほかにも、鎮痛剤として世界的に有名なアスピリンはアメリカでも大量に服用されていますが、服用者の20%の人が全消費量の80%を占めているという調査結果があります。アスピリンの使い過ぎと問題になっているようですが、これも2:8の法則の一例です。※1
働きアリの法則
ビジネスとは全く関係のない生物学の分野の研究でも「2:6:2の法則」が見出されました。「働きアリの法則」です。
働きアリの行動を詳しく観察した結果、「よく働くアリ」は2割、「まったく働かないアリ」が2割、残り6割は適当に働いている(あるいは怠けている)ことが分かったとのことです。
さらに興味深いのは、「よく働くアリ」をすべて取り除くと、残りのアリの中から「よく働くアリ」が出てきて、再び「2:6:2」の割合に戻るということです。「まったく働かないアリ」を取り除いても同じように怠けるアリが出てきて、「2:6:2」に戻ります。※2
大リーグの監督が似たようなことを言っている
大リーグの監督が、巨人軍の長嶋茂雄との対談の中で「2:6:2の法則」と似た話をしています。※3
「先発メンバー9人のうち、監督の指示に従うものは3人、態度未定が3人、そして反抗するものが3人だ。そこで、態度未定の3人を味方に引き込み、反対の3人を封じ込め、軟化させ、従わせる。これが監督の大切な仕事になる。」
2:6:2とは数字が違いますが、同じ趣旨の話はいろいろなところにあるようです。
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世の中には対人関係で悩まれている方が多いと聞きます。
「2:6:2の法則」を当てはめれば、5人に一人はイヤなやつ、一人は親しい友人です。どうしようもないことと諦めて、イヤなやつのことはサッサと忘れ、友人を大事にし、さらに残りの3人も少しずつ親しくなれるよう働きかければ悩みもしばし忘れることができるのではないでしょうか。
だいぶ前のことになりますが、猛威を振るうコロナに対して、政府が国民に人との接触を自粛するよう要請したところ、8割削減することができたとの報道がありました。
「2:6:2の法則」を当てはめて考えてみると、要請に従うかどうかどっちつかずの6割の人がすべて従い、初めから従う人の2割を合わせて8割に達したということでしょう。驚異的なことです。イザとなれば一致団結できる日本人の国民性をあらためて認識しました。
【文献】
※1 生田哲「脳と心をあやつる物質」講談社ブルーバックス(1999年10月20日)
※2 長谷川英祐「働かないアリに意義がある」メディアファクトリー新書(2010年12月31日)
※3 長嶋茂雄「野球へのラブレター」文書新書(2010年8月20日)