マンション管理組合は「組織」である
マンション管理組合は、マンション分譲と同時に区分所有法という法律によって自動的に誕生します。以後、マンションの管理をすべて担っているのですが、問題を抱えている管理組合も少なくありません。
国土交通省は、5年に一度、全国のマンションを対象としたアンケート調査を行っていますが、多くのマンション管理組合に様々な問題のあることが毎回報告されています。これを見ると、どこか根本的なところ、マンション管理組合のあり方そのものに原因が潜んでいるのではないかと思われます。
ところで、マンション管理組合は一種の「組織」です。ここで組織とは、「特定の目的を達成するために形成された秩序ある人の集まり」のことです。個人では達成できない仕事を、複数の人々の協働によって実現しようとするものが組織です。マンション管理組合のあり方とは、組織としてのあり方に他ならないでしょう。
組織には成立のための要件がある
バーナードは、組織の成立には必要にして十分な要件が三つあると述べています。※1
その要件とは、
(1)組織には組織の構成員が認識する共通目的が存在していること。
(2)組織の構成員の間にコミュニケーションが存在し、お互いに意思を伝達できること。
(3)組織の構成員は共通目的の達成のために貢献しようとする意欲をもっていること。
です。
バーナードがこれを発表したのは1930年代で、古典の中でも古いものですが、この組織成立の3要件は、今日の組織論の教科書でも取り上げられている説得力のある普遍的なものです。
マンション管理組合は組織成立の要件を満たしているか?
さて、マンション管理組合はバーナードの組織成立の要件を満足しているでしょうか?
「共通目的」については、区分所有法において「建物、敷地、附属施設の管理を行うこと」と明記されており、共通目的が存在することは明らかです。
「コミュニケーション」については、十分に図られているとは言い難い状況でしょう。
マンション分譲時には、購入者と分譲業者の間のコミュニケーションがあるだけで、購入者間にはコミュニケーションが存在しないであろうことは容易に想像できます。
居住した後も、もともとマンションは住居の独立性が特長であり、となり近所の付き合いが煩わしくてマンションを選んでいる人も多く、よほど親しくなった間柄でもない限り訪問しあうことはほとんどありません。また、組合員が集まって会合できるような会議室のような場所がマンション内に用意されていないことも珍しくありません。管理組合員の間のコミュニケーションを促進させることは非常に難しい状況にあるということができます。
「貢献意欲」についてもほとんど期待できません。
分譲時に、分譲業者から管理組合の原始規約を提示され、承認を求められて初めて管理組合というものの存在を知り、しかも自分自身も管理組合員であることを知るという場合が多いのではないでしょうか。このような状況の中で、管理組合員としての貢献意欲を求めることには無理があるでしょう。
管理組合の活動が具体化し、役員に就任するなどの機会に責任感や使命感に目覚め、徐々に貢献意欲を高めていくというのが一般的かと思われますが、しかし、これを組合員全員に期待することには無理があるでしょう。
結局のところ、マンション管理組合は、コミュニケーションと貢献意欲の不足という点において組織成立の要件を欠いており、未熟児として生まれてくると言わざるを得ません。
【文献】
※1 C.I.バーナード「新訳 経営者の役割」山本安二郎・田杉競・飯野春樹訳、ダイヤモンド社(1956年9月28日、原著発行は1938年)